Blog ブログ

【令和8年熊本地震】売上20%減じゃなくても対象? 事業者が使える融資・返済支援を整理

企業経営

2026.08.27

本記事は2026年8月24日時点で公表されている情報をもとに整理したものです。制度内容は変更される場合があります。申込みの際は、必ず記事末尾の公的窓口で最新情報をご確認ください。本記事は制度の解説であり、融資・保証の可否を保証するものではありません。


「うちは対象にならない」——その判断が、一番もったいない

令和8年熊本地震のあと、事業者の方からよく伺うのが、この二つの言葉です。

「建物が壊れていないから、対象にならないと思う」 「売上は落ちているけれど、20%も落ちてはいない」

ここは、本当に誤解されやすいところです。

ニュースでよく聞く「セーフティネット保証4号」は、たしかに前年同月比20%以上の売上減少が要件です。しかし、熊本県が用意している「金融円滑化特別資金・令和8年熊本地震枠」には、県の資料上、減少率の下限が示されていません。しかも、判定に使えるのは売上高だけではなく、売上総利益率、営業利益率も対象です。さらに「すでに減っている」だけでなく「これから減る見込み」でも申込みの対象になり得ます。

もちろん、最終的には要件の確認と審査があります。ただ、ご自身で「対象外だ」と決めてしまう前に、一度は制度を確認していただきたいというのが、この記事の趣旨です。


制度名は覚えなくて大丈夫。「3つの層」で考える

支援策を調べ始めると、似た名前の制度がいくつも出てきて、それだけで疲れてしまいます。

ですので、制度名から入るのはやめましょう。時間軸で3つの層に分けて考えると、一気に整理できます。

目的該当する手段
第1層|つなぎ今月・来月の支払いをしのぐ熊本県信用保証協会「緊急時短期資金保証制度」
第2層|本体復旧そのものを支える熊本県の制度融資(3種類)
第3層|返済抑制出ていくお金を止める熊本県信用保証協会「緊急時条件変更」

この3つは、どれか一つを選ぶものではありません。組み合わせるものです。

そして、どこから手をつけるかを決める材料は、たった一つです。

「今あるお金で、会社はあと何か月もつのか」

この数字が見えれば、優先すべき層はかなり明確になります。


第1層:今月・来月をしのぐ「つなぎ」

熊本県信用保証協会が、今回の地震を受けて「緊急時短期資金保証制度」の取扱いを実施しています。

項目内容
保証限度額直近の決算期(確定申告期)の月商1か月以内
保証期間6か月以内
資金使途運転資金に限る
返済方法原則として期限到来時の一括返済(返済できない場合は長期資金への借換えも可能)
保証料率0%ではありません(協会の基準料率が適用されます)

ここは誤読しやすいので、はっきり書いておきます。「月商の6か月分が借りられる」制度ではありません。借りられるのは月商1か月分以内で、それを6か月以内に返す、短期の資金です。

つまりこれは、店舗や工場を建て直すための資金ではなく、本格的な資金調達が着地するまでの「つなぎ」です。「今月と来月の支払いをどうするか」——そこに効かせる手段だと理解してください。


第2層:復旧を支える「本体」——熊本県の3つの制度融資

熊本県は、県独自の融資制度として次の3つを用意しています。

金融円滑化特別資金
(令和8年熊本地震枠)
金融円滑化特別資金
(セーフティネット保証対応枠)
小規模事業者おうえん資金
(令和8年熊本地震分)
限度額1企業 8,000万円
1組合 1億円
別枠 8,000万円2,000万円
期間10年以内1年以上10年以内設備 1年以上7年以内
運転 1年以上5年以内
据置2年以内2年以内6か月以内
利率2年以内 1.50%/3年以内 1.70%/5年以内 1.85%/7年以内 2.00%/7年超 2.20%(いずれも以内)同左固定:3年以内 1.50%/5年以内 1.65%/7年以内 1.80%(いずれも以内)
保証料率0.00%(県補助後)0.00%(県補助後)0.00%(県補助後)

(1) 令和8年熊本地震枠——最も対象が広い

対象者は二つに分かれます。

A. 直接の被害を受けた方 店舗の損壊、工場や機械の損傷、商品・在庫の被害など。市町村長が発行する罹災証明書または被災証明書をお持ちであることが要件です。

B. 売上等が減少している、または減少見込みの方 地震の影響を受けて、申込日から1年以内の連続する3か月間の平均が、前年同期に比べて減少している、または減少する見込みの方。判定に使えるのは、

  • 平均売上高
  • 平均売上総利益率
  • 平均営業利益率

の3つです。

取引先が被災して注文が止まった。客足が遠のいた。物流が止まって営業できなかった。予約のキャンセルが続いている——こうした間接的な影響も対象になり得ます。

冒頭で書いたとおり、この枠には減少率の下限が資料上示されていません。「20%も落ちていないから無理だ」と決めつけないでください。

(2) セーフティネット保証対応枠——20%以上減少している方の選択肢

こちらは、セーフティネット保証4号の「特定中小企業者」として市町村長の認定を受けた方が対象です。対象地域は、災害救助法が適用された21市町村とされています。

認定の通常要件は、次の二段構えです。

  • 直近1か月の売上高等が、前年同月比で20%以上減少していること
  • その後2か月を含む3か月間も、前年同期比で20%以上減少する見込みであること

なお、創業して間もない事業者には別の判定方法が用意されています。該当しそうな方は市町村の窓口でご確認ください。

ここで押さえておきたいのが、熊本地震枠との「判定方法の違い」です。

熊本県・熊本地震枠セーフティネット保証4号
判定期間申込日から1年以内の連続する3か月の平均直近1か月の実績+その後2か月を含む3か月の見込み
判定指標売上高/売上総利益率/営業利益率売上高等
減少率の基準資料上、下限の記載なし20%以上

つまり、売上の減少が20%に届かない方でも、熊本地震枠の対象になる可能性があるということです。20%以上減少している方は、両方が選択肢に入ります。どちらが利用でき、どちらが自社に適しているかは、金融機関にご確認ください。

限度額は8,000万円。これは一般保証とは別枠で利用できる保証制度です。通常の保証枠とは切り離して使える枠がある、ということです。

【重要】11月4日は「融資の期限」ではありません

セーフティネット保証4号の指定期間は、令和8年7月28日から11月4日までとされています。ここは誤解が多いところですが、これは市町村に認定の申請ができる期間であって、融資を受けなければならない期限ではありません。

また、認定を受けたからといって、融資や保証が自動的に決まるわけでもありません。認定とは別に、金融機関と保証協会の審査があります。認定書には有効期限(認定日から30日)もありますので、取得したら速やかに金融機関へお持ちください。

「認定を取ってから銀行に行く」のではなく、認定の準備と金融機関への相談は、同時に進めてください。

(3) 小規模事業者おうえん資金——宿泊業・娯楽業の方は要確認

対象は従業員20人以下の小規模企業者。ただし商業・サービス業は5人以下です。

ここに、見落としやすい点があります。県の資料には「商業・サービス業5人(宿泊業・娯楽業を除く)」と書かれています。これは、サービス業のうち宿泊業と娯楽業は、5人ではなく20人以下で判定されるという意味です。

**旅館、ホテル、レジャー施設などを営まれている方は、従業員が5人を超えていても、20人以下であれば対象になり得ます。**宿泊業は今回の地震で最も影響を受けやすい業種の一つですので、ここは必ず確認してください。

あわせて、既存の保証協会の保証付き融資残高と、この資金との合計が2,000万円以下であることも要件です。

申込先に期間限定の特例があります

制度によって申込先が異なります。

  • 金融円滑化特別資金 → 取扱金融機関、商工会議所、商工会、中小企業団体中央会
  • 小規模事業者おうえん資金 → 商工会議所、商工会、熊本県信用組合、産業支援財団

これに加えて、今回のセーフティネット保証4号の指定期間に限り、取扱金融機関の窓口からも申し込みができるとされています。期間限定で、普段お付き合いのある銀行や信用金庫からそのまま相談できる、ということです。ここも期限と連動しています。


押さえておきたい2つのポイント

保証料0%=無利息、ではありません

県の3制度はいずれも保証料率0.00%(県補助後)です。これは大きなメリットですが、融資そのものの金利は別途かかります。上の表のとおり、期間2年以内で年1.50%以内、10年で年2.20%以内です。

この制度は「金利がゼロになる制度」ではなく、「通常なら別途かかる信用保証料の負担が、県の補助によってなくなる制度」です。ここは正確に理解しておいてください。

「据置2年」は、得ではなく“交換”です

据置期間2年というインパクトを、数字で見てみます。8,000万円を10年で借りる場合の、元金均等返済による単純計算です(据置期間は融資期間に含まれるものとします)。

元金の月額返済
据置を使わない場合約67万円
据置を2年使った場合(残り8年で返済)約83万円

つまり据置とは、返済がなくなることではありません。

据置を使わなければ最初の2年で返していたはずの元金、およそ1,600万円を後ろにずらす。その代わり、据置が明けたあとの毎月の負担が16万円ほど重くなる。しかも据置期間中も利息はかかります。

得をする制度ではなく、時間と引き換えに、後半の負担を受け入れる判断です。

それでも災害直後においては、この判断には十分な合理性があります。後ろにずらした分のキャッシュを、設備の復旧や従業員の雇用維持に回せる可能性が生まれるからです。もちろん自動的に手元に積み上がるわけではなく、修繕費や当面の赤字の穴埋めにも流れていきます。それでも、**経営者が焦らずに判断できる時間が生まれる。**これが据置期間の本当の価値です。

担保と保証人

県の3制度では、担保は「必要に応じて徴求」、保証人は「原則として法人代表者以外の連帯保証人は不要」**とされています。

ここは正確に書きます。「経営者保証が不要」という意味ではありません。「代表者以外の第三者に保証人を頼む必要は原則ない」という意味です。親族や知人に頭を下げなければいけないのでは、と思って相談をためらっている方。その心配は原則として不要です。


第3層:出ていくお金を止める

災害時の資金繰りというと、どうしても「新しく借りること」ばかり考えてしまいます。しかし、新しく借りることだけが資金繰り対策ではありません。

熊本県信用保証協会では、既存の保証付き借入について**「緊急時条件変更」**を実施しています。内容は、6か月以内の元金返済据置です。

そしてもう一点。協会の資料では、事業計画書や資金繰り表などの提出は原則として不要とされています。被災直後に資料を作る余力がない——その状態でも相談できるように設計されている、ということです。

数字で考えてみてください

毎月50万円の借入返済をしている会社があるとします。年間600万円です。

ここで新しく1,000万円借りるという選択肢があります。一方で、半年間この元金返済を止められれば、それだけで300万円が会社に残ります。

整理すると、こうです。

  • 新規融資は、手元の資金を増やすもの
  • 条件変更は、手元の資金が出ていくのを抑えるもの

条件変更には、新たな借入元金を増やさずに当面の資金流出を抑えられるという特徴があります。

ただし、いいことばかりではありません。据置が終わったあとは、返済期間を延ばすのか、その後の返済額を調整するのか、いずれにせよ後半の負担は変わってきます。今後の資金調達に影響が出る可能性もあります。具体的な返済条件は金融機関との相談になります。

そして条件変更も、申し出れば自動的に認められるものではありません。金融機関が会社の状況を見て判断します。だからこそ、返済期日を迎えてからではなく、その前に相談してください。


整理:あなたはどこから手をつけるか

今月・来月の支払いが危ない方 → 協会の緊急時短期資金保証制度。融資額は月商1か月分以内、期間は6か月以内。運転資金限定の短期のつなぎ資金です。

店舗や設備に直接の被害がある方 → 市町村で罹災証明書または被災証明書を取得し、金融円滑化特別資金・熊本地震枠。

直接の被害はないが、売上や利益が落ちている、または落ちる見込みがある方 → こちらも熊本地震枠の対象になり得ます。減少率の下限は示されていません。

直近1か月の売上が前年同月比20%以上減少し、その後2か月を含む3か月間も20%以上の減少が見込まれる方 → 市町村長の認定を受けて、セーフティネット保証対応枠。一般保証とは別枠で8,000万円。認定申請は11月4日までです。

従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下。ただし宿泊業と娯楽業は20人以下)で、保証付き残高との合計が2,000万円以下の方 → 小規模事業者おうえん資金。

すでに返済負担が重い方 → 新規融資だけでなく、緊急時条件変更も相談してください。

見落としやすい共通要件

県の制度融資には、県内で1年以上同じ事業を営んでいること、金融機関の取引停止処分を受けていないこと、保証協会に対する求償債務がないこと、そして納期が到来した県税に滞納がないことなどの共通要件があります。

私の経験からの実感ですが、県税や社会保険料の納付状況は、申込みの段階で確認を求められることが少なくありません。心当たりのある方は早めに手を打っておいてください。

公庫・商工中金にも窓口があります

本記事は県の制度と保証協会を中心に整理していますが、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫にも今回の地震に関する相談窓口が設けられています。公庫の災害復旧貸付は、国民生活事業では各融資制度の限度額に3,000万円が上乗せされ、中小企業事業では1億5,000万円が別枠で設けられています。


今週やっていただきたい3つのこと

1. 被害の状況を記録する

建物、設備、機械、商品、在庫、車両。被害を受けたものは写真と動画で記録を。修理や買い替えが必要なものは見積書も保管を。

法人の経営者の方は、窓口にご注意ください。社長ご自身の住所と会社の所在地が異なる場合があります。罹災証明書・被災証明書は被害を受けた建物や事業所がある市町村、セーフティネット保証4号の認定は本店等の所在地の市町村が窓口です。窓口が分かれることがあります。

2. 売上の数字を整理する

直近1か月の売上高と前年同月の売上高。そして、これから2か月分の売上見込み。セーフティネット保証4号の認定は実績1か月+見込み2か月という組み立てですので、この資料を先に用意しておくと申請が格段に速く進みます。

あわせて、今後6か月の資金繰りを確認してください。現預金、売掛金の入金、そして給与・家賃・仕入代金・借入返済・税金・社会保険料・修繕費。これを数字にして、**「このままだと、何月にお金が足りなくなるのか」**をはっきりさせてください。

この一つの数字が見えれば、3つの層のどこを優先すべきかが、かなり明確になります。

3. 早めに相談する

「まだお金はあるから大丈夫」——そう思っている時こそ相談してください。金融機関の立場からしても、資金が尽きてから相談を受けるより、先の見通しを持って早めに来てもらったほうが、できることははるかに多くなります。


相談窓口

熊本県信用保証協会「令和8年熊本地震に伴う災害に関する特別相談窓口」 受付:平日 9:00〜17:15(土日祝はメールにて受付) 本所(熊本市中央区南熊本4-1-1)0120-69-3221/096-375-2000 八代支所 0965-33-2579 天草支所 0969-23-2015 https://www.kumamoto-cgc.or.jp/9349/

熊本県 商工労働部 商工雇用創生局 商工振興金融課 TEL 096-333-2314 https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/61/50733.html

セーフティネット保証4号の認定申請 本店等の所在地を管轄する市町村の窓口へ(申請期間:令和8年7月28日〜11月4日)

罹災証明書・被災証明書 被害を受けた建物・事業所がある市町村の窓口へ


最後に:資金繰りの目的は、借りることではありません

災害時の資金繰りは、お金を借りることが目的ではありません。会社が正常に戻るまでの時間を、確保することが目的です。

手元にお金が残っていれば、従業員の雇用を守れます。設備を直せます。仕入れを再開できます。そして何より、経営者ご自身が、焦って判断せずに済みます。

もう一つだけ、申し上げます。

災害のあとに会社が止まる原因は、お金がないことだけではありません。判断が、社長おひとりに集中していることも、大きな要因です。

罹災証明の申請も、売上資料の整理も、資金繰り表の作成も、金融機関への説明も——全部、社長の手が空かないと進まない。そういう会社ほど、動き出しが遅れます。

ですから、この記事に書いたことのうち、社内で分担できるものは、今日、分担してください。

そして、セーフティネット保証4号の認定申請の期限は令和8年11月4日です。

制度は、「知っている人」ではなく、「期限内に動いた人」にしか届きません。

「うちは対象にならないだろう」——そう決めつけずに、取引金融機関、熊本県信用保証協会、商工会議所や商工会に、まずはご相談ください。

一日も早く、皆さまの事業が元の状態に戻ることを願っています。


※本記事の内容は執筆時点の公表情報に基づくものです。制度は変更される場合がありますので、申込みにあたっては必ず各窓口で最新情報をご確認ください。

この記事をシェアする