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ルシアン事件に学ぶ!支援機関選びの落とし穴

事業承継

2025.05.01

事業承継やM&Aを検討する中小企業にとって、信頼できる支援者の存在は極めて重要です。しかし、誤った支援機関の選定が企業の存続を揺るがす事態につながることも。

実際に起きた「ルシアン事件」は、M&A支援者による乗っ取り未遂というショッキングな事例でした。この事件をもとに、支援機関選びで失敗しないためのポイントと、適切な専門家との連携の重要性を解説します。

ルシアン事件が示す支援者のリスク

支援者を信じた企業に起きた悲劇

2023年、アパレル企業「ルシアン」は、後継者不在に伴いM&Aを選択。信頼していた仲介者に相談し、譲渡交渉が進められました。しかし、譲受企業が実は支援者と密接な関係にあり、企業価値よりも「奪うこと」が目的だったことが後に判明。契約内容も曖昧なまま進行し、最終的には「乗っ取り未遂」にまで発展しました。

仲介者と買収者の“癒着構造”

この事件で問題となったのは、支援者と買収企業が裏で繋がっていたという構造的問題です。仲介者は本来、中立であるべき立場。しかし自らの利益のために一方に偏った情報を提示し、譲渡企業を不利な条件で誘導していたのです。

不適切な支援者の見抜き方

両手仲介と利益相反の関係

中小M&Aでは、譲渡企業・譲受企業の双方から手数料を取る「両手仲介」が主流です。これは本質的に利益相反のリスクをはらんでいます。ガイドラインでも「依頼者の利益の最大化」が強調されており、片手型(FA型)の採用やセカンドオピニオン取得が推奨されています​。

危ない支援者の共通点

・契約書の内容を明確に説明しない
・やたらと急がせる
・他の専門家との相談を妨げる
・「自社の知り合い」をゴリ押しする

こうした支援者には注意が必要です。

正しい支援機関を選ぶには

M&A支援機関登録制度を活用

中小企業庁が定める「M&A支援機関登録制度」では、一定の倫理基準・業務品質を満たした支援者のみが登録されています。登録支援機関は、補助金対象にもなりやすく、情報開示や手数料の透明性が求められるため、信頼度が高いです​。

セカンドオピニオンを取り入れる

中小M&Aガイドラインでは、他の専門家や士業によるセカンドオピニオンの取得が推奨されています。1人の意見だけでなく、複数の視点を持つことで「本当に自社にとって良い条件か」を冷静に判断できます​。

公的支援機関と士業の活用方法

事業承継・引継ぎ支援センターの安心感

47都道府県に設置されている公的支援機関「事業承継・引継ぎ支援センター」は、非営利の立場から中立的なアドバイスや専門家紹介を行います。仲介ではなく、あくまで「企業の未来を守る」立場なのが特長です​。

専門士業との連携が守る企業の未来

弁護士による契約チェック、公認会計士や税理士によるバリュエーション、中小企業診断士による経営評価など、各士業の専門分野を組み合わせることがリスク回避の鍵になります​。

経営者が取るべき実践ステップ

契約前のチェックリスト

・支援機関は登録制度に参加しているか
・手数料体系が明確か
・利益相反の構造がないか
・複数の支援者から意見を得ているか
・契約解除条件や専任条項の確認

判断基準は「人柄」より「構造」

「昔からの付き合いだから大丈夫」ではなく、「契約内容」や「業務構造」で判断する姿勢が必要です。事業承継は感情で動くと失敗しやすいため、制度や体制に裏付けされた“仕組み”で信頼を構築することが大切です。

最後に

ルシアン事件は、支援者との信頼関係が裏切られたことで、企業の存続すら危うくなった実例です。事業承継やM&Aの場面では、「誰に相談するか」が未来を左右します。信頼とは、感情ではなく“構造”と“制度”で担保されるもの。経営者として冷静な判断と準備を怠らず、正しい支援機関と歩むことが、企業の未来を守る最善の道なのです。

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